新人研修におけるPBL型アクティブラーニングの企画法①

本稿では,新人研修における PBL
(プロジェクト・ベースド・ ラーニング)の
学習をどう企画すればいいのか? について
述べていきたいと思います。


■3 つの特徴

PBLとは,日本語では「プロジェクト型学習」
や「問題解決型学習」などと訳されます。
PBLは,通常の研修や教育手法と以下の
3 点が異なり,注目を集めています。

1 点目は,参加者の主体性を強化すること。
2 点目は,チームでの課題解決、アウトプットを目的とすること。
3 点目は,教え合う文化を醸成するきっかけにすること。

これらのポイントは,新人が配属される現場が
求めていることでもあります。
毎年,多くの会社で人事部主催の新人研修が
実施されております。

しかしながら,いざ,新人研修が終わり,
現場に新人が配属されると,
新人研修と現場の実態とのギャップがあり
職場への早期適応に苦しむケースが後を絶ちません。

 
新人が入社後,なるべく早く現場に適応し,
少しでも多くの先輩やお客様に貢献できる人材に
育てるにはどうしたらよいか? この点について
述べていくのが本稿の目的です。

 
■配属ショックを緩和

では,まず,配属後のリアリティショックに
ついて述べておきたいと思います。
そもそも,その原因は一体どこにあるのでしょうか?

 
原因としては,新人研修自体を外部の研修会社に
頼りすぎてしまうことが考えられます。

 
大勢のクラスを同時に回す会社も多いので,
外部の研修機関に頼るのも分かります。

 
しかしながら,配属後のリアリティショック
を緩和させるには, 新人研修の一部を内製化し、
先輩社員が新人に教えるという現場指導その
ものを教室内で再現するのも1つの方法です。

社内講師を育成し,生々しい現場のエピソード
や苦労話,それを
乗り越えた経験談など現場で
の経験を共有し
てもらうことで,配属後のイメ
ージが湧きや
すく,準備もしやすくなります。

 
また,社内講師を育成することに加えて,
現場での仕事を類推させるような企画を考えます。
それが本連載のテーマである,Project Based
Learning(以下PBLと記載) という形式です。

 
与えられた自社のテーマに関して,新入社員が
チーム単位で課題解決につながる企画案を考え,
最終的に幹部社員などの前でプレゼンテーション
実施するという形式です。

 
本稿では,上記のような新人研修におけるPBL
の企画方法とその運営方法,また,これらの
活動を通じたリーダーシップ開発について全6
回にわたってご紹介してまいります。

 
■やる気になるテーマを

それでは,早速,新人研修におけるPBLを
企画する際のポイントについて述べていきます。
まず,新入社員は研修期間中,どうしても
受け身になりやすいため,いかに主体的に
研修に参加させるかを意識して企画します。

 
そのためには,まず,新人が議論したくなる
ような自社テーマを選定することが大切です。
例えば、「10年後の我が社の売上を◯倍に
するための戦略とは?」「A商品の売上高を、
グローバル展開を通じて◯倍にするには?」
など,新入社員が自分事(じぶんごと)で考え
やすく,かつ,会社 視点,組織視点のテーマ
であることが大切です。

 
このテーマに関する議論を通じて,新入社員が
“この会社に入ってよかった,この会社で勝負しよう,
この会社のことが改めて好きになった”という状態を
目指せるようにすることがまず求められます。

 

新人を現場適用させるための大前提として,自社の
理解を深めることはとても大切なポイントです。
この自社の理解を深めていくプロジェクトの過程に
おいて,会社の理念や行動規範,ビジネスの基本,
リーダーシップなどあらゆる要素が取り入れられる
ことはいうまでもありません。

 
■体験させ意味づける

例えば,グループ単位で議論を通じてチームで
案をまとめる際には,上司役の講師に報告,
連絡, 相談を行います。しかし,その行動が
現場で求める報連相のレベルに達していない
と感じた場合は,現場と同じ温度感で指導します。

 
また,仕事の進め方や時間管理も現場と同じ
ように求めます。提出時間に間に合わない
など実際の仕事ではあってはならないこと
などがあれば,都度指摘します。

外部講師での運用の場合は、現場感のすり合わせが
必要となりますし、内製講師の場合は、それが多少
楽でしょう。

もちろん,指摘だけで終わるわけではありません。
その失敗の原因について,グループでディスカッ
ションさせます。

 
PBL型の授業では,体験させるだけでなく,
その
体験をどう意味づけていくかを議論させ,
現場で
活用する知恵を獲得していきます。

 
つまり,今の経験は,どういう意味だったのか
ということを意味づけるプロセスがあり,それを
どう次につなげていくかを考えていく経験学習の
プロセスを回させることに主眼を置きます。

 
新入社員は,現場に配属されると,うまく
いかないこと,失敗することが多くあります。
そのたびに落ち込んでいては心も身体も耐え
切れません。そこから何を学び取り、どう
次に活かしていくか、というサイクルを回し
ながら,力強く成長していくことが求められ
ます。

 
■チームに葛藤を起こす

また,その意味においては,どのような
チームでプロジェクトの運営をさせるか
というメンバー構成もとても重要です。

 
うまくいきそうなメンバー同士では,
学びは深まりづらくなります。 配属
される現場では,自分のタイプとは
異なる先輩方やお客様と共に仕事を
することが今まで以上に求められる
わけです。

 
あえて,チーム内で葛藤が起きるような
メンバーを組ませることで,
それをどの
ように乗り越えていく
のかが,1 つの
学びのポイントに
なるように企画します。
そうすることで,当然ですが、チームが
崩壊する寸前までいくことがあります。

 
講師側としては,ハラハラすること
なのですが,それをチームがどう
乗り越えていくかということに,
エネルギーを注ぎます。 そのときに
大切になるのが,新人にお互いの
価値観を理解させることです。

 
なぜなら,価値観が対極の場合,
お互いがなぜ,そのような行動や発言
につながるのかが 、理解できないからです。

 
例えば,片方は,調和を大切にする
メンバーで,自分の意見を抑え,
チーム全体の調和に目を配るタイプだ
とします。

 
しかし,もう 一方のタイプは,調和よりも,
ビジネスとしての成果を求めるメンバーです。
このタイプは,「なぜ,もっと発言しないのか」
と相手に伝え,お互いの葛藤を生じさせる
ことが多々あります。 そこで,講師側は,
お互いの価値観を理解させつつ,最終的な
テーマに対するゴールにいかにたどり着くのか
という目的に立ち返らせ,チームを再び機能
させることが求められるのです。

 
このようにPBLの企画をする際には,現場に近しい
仮想環境を用意し,その中で行動していくことで
現場感を養っていくことが大切になるのです。
次回は,この続きについて説明していきます。

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