新人研修におけるPBL型アクティブラーニングの企画法②
新人研修のPBL型アクション
ラーニング5つの企画ポイント
今回も前回に引き続き,PBL型アクテ
ィブラーニングの企画方法について述
べてまいります。
復習となりますが,新人研修における
アクティブラーニングでは,会社から
テーマを与えられ,グループごとにデ
ィスカッションをします。
そして,話し合って作成した企画案を
プレゼンテーションし,競い合います。
その間のチーム活動を通じた主体的な
学習を通じて,現場への接続を促すと
いうアプローチです。いかに配属ショ
ックを緩和し,現場の仕事に近づける
企画にするかという趣旨の話を前回い
たしました。
実際に,本アクティブラーニングを企
画する際には,みんなが“やる気になる
テーマ”を掲げる重要性やチーム学習の
経験を通じて,内省させ,意味づける
ことの重要性を確認しました。
そして,チームでの学習は,スムーズに
いくような企画設計よりは,チームにコ
ンフリクトを起こさせ,それをいかにチ
ームで乗り越えさせていくかという観点
での企画が,より学びが深くなることも
確認しました。今回は,さらにより精緻
な新人研修のアクティブラーニングの企
画を行っていくうえでのポイントを5つ
に分けて解説します。
1)目的をぶらさない
まず,1つ目のポイントは,目的をぶらさ
ないことです。意外とチームでのプロジェ
クト活動を進めていくうえで,目的がブレ
てしまうことがあります。新人研修でアク
ティブラーニングを行うとしたら,みなさ
んは,どういった目的を設定するでしょうか?
例えば,この目的を,アクティブラーニン
グの中で行われることが多いプレゼンテー
ション大会で,No.1を勝ちとる!というこ
とに置くのか,もしくは,その過程でのチ
ーム学習を通じていかにリーダーシップを
発揮するかという点に置くのか,はたまた,
会社の理念や歴史を理解することに置くの
か,会社によってもアプローチが異なると
ころでしょう。
基本的な考え方として,あくまで成果を出す
(No.1になる)ことが,ビジネスでは大切であ
るということです。通常のビジネスでは,プ
レゼン案が採択されなければ売上は一銭も入
ってこないため,何としてもNo.1になり,
企画案を採択してもらうことに力点を置くと
いう考え方です。
2位で惜しかったといっても,会社の売上に
つながらなければ,将来的に従業員の給与も
払えなくなる事態を招き,将来的な投資も控
えざるをえなくなるというニュアンスを新入
社員に伝えることになります。
ただ,No.1をとる過程において,会社で求め
るリーダーシップ行動やバリュー,行動規範
などを連動させ,そのプロセスをしっかりみ
ていくことも大切です。ただし,プロセスが
良くても結果が出なければ意味がないわけで,
あくまで成果を出すためのリーダーシップ行
動を確認していくことになります。
2)プレゼン後の振り返り
次に,2つ目の企画ポイントは,アクティブラ
ーニングの最終回より前にプレゼンテーション
大会を設定することです。最終プレゼンの後に,
振り返りのセッションを設けていないと,最後
のプレゼンから何を学び,現場配属後にどう活
かすのかという視点が,すっぽりと抜け落ちて
しまいます。
多くの場合は,最終回にプレゼン大会を設定し
て一喜一憂して終わりという現状になっており
ます。経験学習の考え方に合わせて,体験を内
省させ,どう次に活かすのかという視点を企画
に反映させることが大切になります。
3)競い合わせる
そして,3つ目は,プレゼンテーションの大会
自体を予選大会,決勝大会というように,
チームで協力しながら,競い合わせる仕組み
にすることです。競うことでモチベーションが
高まりますし,仲間意識をより強められます。
そのためには決勝大会において,役員をはじめ
としたしかるべき方に同席していただき,講評
していただけるように事前に調整することが
大切になってきます。
一方で,決勝大会では,予選で負けた多くの
新入社員が観覧席にいることになります。
そこでは,決勝に進出したチームのプレゼン
を見るだけになり,モチベーションを維持
することが難しくなる点が課題です。決勝
チームの採点をさせたり,アンケートコメン
トを書かせるなどのアプローチを入れること
である程度モチベーションを維持することが
できます。
4)資料テイストの統一
4つ目のポイントは,プレゼンテーション資料
のテイストの統一です。意外と,各グループ
から提出されるプレゼンテーション資料のテイ
ストがバラバラです。
タイトルの書き方,フォントの種類,色使い,
イラストの著作権問題,アニメーションの使
用可否など,細かな部分を統一しておく必要
があります。自社でプレゼンテーション資料
の作成ルールがあればそれを新入社員に提示
するとよいでしょう。
決勝大会では,責任者が審査することになる
ので,それに耐えうる資料づくりのポイント
を,新人研修のどこかでレクチャーしておく
ことが求められます。
また,資料のテイスト以外にそもそものプレゼ
ンテーションの作成の仕方も問題になることが
あります。プレゼン時間は,5分程度が一般的
であるため,いかに瞬時に理解できるシンプル
なスライドをつくれるかが大切です。
読ませるようなスライドでは,責任者がその場
で判断するのは難しくなります。スライドのつ
くり方や,メッセージの絞り込みなど基本的な
資料作成の基本も新入社員研修中に押さえてお
くとよいでしょう。
5)採点基準の明確化
5つ目のポイントは,プレゼンテーションの
採点です。決勝のプレゼンテーション大会で
は,責任者に評価をしてもらい,得点をつけ
てもらいます。採点基準も明確にしておく必
要があります。採点基準は,責任者に知らせ
るだけでなく,本アクティブラーニングの初
期段階で,新入社員にも,どんな視点でプレ
ゼンテーションが評価されるのかを知らせて
おく必要があります。
ちなみに,評価軸を考えるうえで大切なこと
は,自社が何を大切にしているかを明確にす
ることです。これは,最終のプレゼンテーシ
ョンをジャッジする責任者と主管部門が企画
承認前の段階で擦り合わせておく必要があり
ます。
評価で大切にする軸は,実現可能性なのか,
新規性なのか,社会貢献性なのかなど事前に
考えておく必要があります。また,評価項目
は複数になることが通常ですので,評価項目
ごとの重みづけをするのかしないのかなども
決めておきます。
細かくいえば,決勝大会では,審査員の評価
と新人の会場評価との重みをどうするかとい
った問題もあります。審査員賞,会場賞など
の賞に分けて実施するケースもあります。
このような細かな点も企画段階で詰めておく
とよいでしょう。
以上,1回目と2回目で新人研修におけるPBL
型アクティブラーニングの企画方法について
述べてまいりましたが,いかがでしたでしょ
うか?主体的に学びを取りに行く環境で,よ
り行動力のある新人を育てるPBL型のアクテ
ィブラーニングをぜひ企画してみてください。
次回からは,アクティブラーニングを推進する
ための社内講師に必要なポイントをお伝えした
いと思います。